What is Gamma-Ray Bursts?

ガンマ線バーストって何?

ベラ衛星

ガンマ線バースト発見の歴史

1960年代、アメリカ空軍は核実験禁止条約による取り決めを監視すべく、ベラ衛星という 人工衛星を打ち上げました。核爆発は地球大気上で大量のガンマ線を放射するため、 これらの衛星はガンマ線に感度のある検出器を搭載していました。幸運な事にこの条約に 違反しているという事はありませんでした。そのかわりに、ベラ衛星は我々の太陽系の 外側からやってきているなぞに満ちたガンマ線の閃光 (ガンマ線バースト) を発見しました。

最初のガンマ線バーストの発見は 1967年の7月です。しかしながら、セキュリティの問題 のため、ロスアラモス国立研究所の Ray Klebesadel, Ian Strong そして Roy Olson ら が発見の報告を行ったのは、1973 年でした。2003年10月にはガンマ線バースト発見 30 年 (発見の報告があってから30年)を記念して、ロスアラモス国立研究所主催のガンマ線バースト 国際会議が、行われました。

(Swift の official web page A History of Gamma-Ray Bursts を参考)




下の図が HETE が捉えた3つのガンマ線バーストの光度曲線 (横軸に時間を秒で、縦軸に ガンマ線 (32-400 keV) での強度)を並べたものです。激しい時間変動を繰り返すもの から、継続時間が 2秒にも満たないものまで、ガンマ線バーストは様々な顔をもって います。

多い事は良い事だ、ガンマ線バーストの大量観測

コンプトンガンマ線天文台
1991年から2001年まで活躍した、コンプトンガンマ線天文台 (Compton Gamma-Ray Observatory; CGRO) に搭載されていた BATSE (Burst And Transient Source Experiment) 検出器は 2704 個のガンマ線バーストを観測しました。BATSE は数度という非常に粗い精度ですが、 バースト源の位置を決定する事ができました。下の図が銀河座標系でしめした 2704 個の BATSE がとらえたガンマ線バーストの全天分布です。

このような等方的な全天分布になるためには、 ガンマ線バーストが我々の銀河系内で起こっているか、あるいは、宇宙論的な遠方で起 こっているかのどちらかでなければいけません。1995年 4月 22日、この BATSE の観測結果を踏まえ、ガンマ線 バーストの起こっている距離に関する大討論会が2人の理論物理学者によって行われました。 系内説を唱えたのは、シカゴ大学のラム教授、そして、遠方説を唱えたのはプリンストン 大学のパチンスキー教授でした。この討論会には 200人近い研究者が参加しましたが、 決着はつきませんでした。

バーストの残り火、残光の発見

BeppoSAX 衛星
1997年、イタリアとオランダの共同で打ち上げられた X線/ガンマ線天文衛星 BeppoSAX (ベッポサックスと読みます) はガンマ線バーストの残り火である "残光" をX線領域で 発見しました。また、地上の観測者がこの X線残光の位置に望遠鏡を向けた所、 可視光でも残光が発見されました。

下の図が 1997年2月28日に起こったガンマ線バーストで初めて発見された X線残光の 画像です。左がガンマ線バースト発生 8時間後のX線イメージで、右が2日後のイメージ です。8時間後のイメージには明るく受かっている X線源が 2日後には暗くなっている のが分かります。






BeppoSAX 衛星 MECS 検出器の X線画像 (Costa et al., Nature, 387, 783 (1997))

下の図が同じバーストで発見された可視光での残光です。左がバースト発生 21時間 後、右が 9日後に取得した画像です。OT と矢印で示してあるのが残光です。X線残光 同様、暗くなっているのが分かります。


可視光(V バンド)での画像 (van Paradijs et al., Nature, 386, 686 (1997))

可視光での残光発見により、ガンマ線バーストの距離を測る事が可能になりました。 用いる手法は可視光で分光観測を行い、残光 (あるいは母銀河) の赤方偏移を決める という方法です。なんとガンマ線バーストは数十から数百億光年の遠方宇宙で起こった爆発 だったのです。


坂本 貴紀 (sakamoto@hp.phys.titech.ac.jp)