PoGOの検出器構成
           
図1(左) PoGO の全体構成。217unit の井戸型phoswich 検出器が、
隙間なく並べられて約1000 cm^2の幾何面積を実現する(中心部のユニットは
省略して書いてある)(右)PoGO の検出器構成の概念図。橙:Fastシンチレータ、青:Slowシンチレータ、緑:BGOシンチレータ
PoGOは 217ユニットの井戸型 phoswich カウンタで構成され、全体として高さが
110cm, 直径が 65cmの大きさを持ち、幾何学的な面積は 987 cm^2 となります。
一本一本のユニットは直径が約3cm、重さが650 g の非常に細長い検出器で、
速い時定数をもつ Fast プラスチックシンチレータ(図1の橙)、
遲い時定数をもつ Slow プラスチックシンチレータ(図1の青)、
底辺部の BGOシンチレータ(図1の緑)より構成されます。大変複雑な
構成に思われるかもしれませんが、これは気球高度において深刻なバックグラウンド
を除去するために最適化された構成となっています。
X線、γ線領域では天体からの信号よりも大気からの散乱γ線や宇宙線イベントに
よるバックグラウンドが100倍以上も高いため、これらを効率良く取り除くことが
感度の良い観測の鍵となります。PoGO では検出器を非常に細長くして開口角を
5deg^2 にまで絞りこむことで、天体からの信号以外のイベントを効率よく取り除く
ことができます。天体からの信号は真正面からのみ入射するため、Fast シンチレータ
のみにエネルギーを付与します。一方で、検出器の斜め前や下から入ってくる
バックグラウンド事象は、SlowシンチレータやBGOシンチレータを通過する際に
エネルギーを落します。これらのシンチレータは Fast シンチレータと時定数が
大きく異るため、波形弁別により明確に区別して除去することが可能です。
      
図2(左) Fast シンチレータ、Slow シンチレータ出力波形の概念図。(右)2次元histogram による、バックグラウンドイベントの除去
PoGO は30〜200 keV に感度を持ち、複数のユニットに跨がるコンプトン散乱の
異方性を利用して偏光X線を検出します。つまり、あるユニットの Fast シンチレータ
で散乱されたγ線が、隣接するユニットでどのような角度分布で検出されるかを
調べることで、偏光が分かるのです。天体からの光に偏りが無い場合、
散乱されたγ線は、隣接するユニットに等方的な分布をもって吸収されます。一方で、
偏光γ線は、その偏りのベクトルと垂直方向に弾かれやすいという性質があるため、
散乱分布は特定の方向に「偏った」分布となります。100%偏った光が検出器
に入射した場合、どれくらいの非等方性が観測されるかを示した量が
モジューレーション係数 M と呼ばれる量で、PoGO は M = 30% といった優れた
偏光検出性能を持つことがシミュレーションと実測から検証されています。
図3:偏光γ線の散乱方向(概念図)