期待される性能

PoGO は徹底的なバックグラウンド除去により、従来観測が不可能であった微弱な 天体からの偏光X線をも観測することが可能です。まずは、過去の気球実験で得られた 実測データをもとに、PoGO の検出感度を定量的に見積ってみましょう。

図1(左)に示したのは、カニ星雲の1/10 の明るさの天体を、 6時間観測した場合に 期待されるスペクトルです。30-100 keV の広い領域で天体からの信号がバックグラウンドを大きく上回り、非常に高い有為性 で検出可能なことが分かります。図1(右)に示したのは、ブラックホール天体白鳥座 X-1を観測した場合の検出限界です。ブラックホール天体には、大きく分けて Low State, High State の異なる状態が知られていますが、どちらの状態でも 100 keV まで スペクトルを取得することができます。

図1(左)0.1 Crab の天体を 6時間観測した場合のγ線イベント(赤)とバックグラウンド(緑、青、紫。コリメータの違い)(右)ブラックホール白鳥座 X-1 を観測した場合の検出限界。

続いて、カニ星雲を6時間観測してみましょう。γ線パルサーの放射機構は未だに よく分か」っておらず、いくつかの有力な理論モデルが提案されています。 放射領域の違いによってPolar capモデル, Outer gapモデル, causticモデルなどが 考えられておりますが、どのモデルが正しいかは、測光や分光だけでは区別することが できません。しかしながら、3つのモデルは全く異なる偏光モジューレションを予想するため、PoGO による観測で明確に区別することができるようになります。

図2(左)異なる理論モデルが予想する、パルサーのγ線放射領域。 (右)カニ星雲を観測した場合に期待されるモジュレーション。Polar cap, Outer gap, caustic の3つの理論に、明確な結論を与えることができる

以上はシミュレーションで期待される性能を示しましたが、実際の検出器を使った データとの比較が重要な課題です。我々は、2003 年から米国Argonne と日本のKEK-PF で PoGO のプロトタイプ検出器を用いた測定を行い、シミュレーションと定量的な 比較検討を行っています。図3は、2004年12月にKEK-PFで行った試験の様子で、期待通り に 30-70 keV までのエネルギー領域で期待される偏光検出性能が得られることを 確認しました。この場合のモジュレーション係数は M〜 0.3 で、シミュレーションと 精確に一致しています。

図3: 2004年12月のKEK-PF 実験におけるセットアップ
図4 (上)PoGO 7ユニットで実測した、30 keV のモジュレーション (下)PoGO 7ユニットで実測した、50 keV のモジュレーション。