HETE_logo HETE-2 って何?

HETE-2 (High Energy Transient Explorer 2; 高エネルギートランジェント天体探査機)はガンマ線バーストを検出して その位置を決めるために作られた小型科学衛星です。 ガンマ線バーストの座標は検出後数秒以内に地上観測者に伝えられます。 HETE によって、ガンマ線バーストの発生直後の詳しい観測が初めて可能に なるのです。

HETE-2 の "2"って? (ちょっと悲しい歴史があるのです...)

多波長でのガンマ線バースト観測衛星というコンセプトは 1981年に開かれた サンタクルズ会議で議論されました。日本からの参加者の中には当時大学院生 だった、我らのボス 河合先生もいらっしゃいました。 1986年には、 マサチューセッツ工科 大学が主導する HETE 計画のための国際チームが提案されました。この計画 はガンマ線バーストの謎を解明すべく、ガンマ線バーストの正確な位置決定 と広い波長域での観測という科学的な目的を絞ったものでした。

1989年に NASAがガンマ線バーストを探査する低予算の衛星計画を認めました。 そして、1991年に HETE-1 計画へ予算がつき、HETE-1 衛星の設計や製作が 始まりました。

HETE-1 衛星は バージニア州 Wallop 島からペガサスロケットで、 アルゼンチンの SAC-B 衛星とともに、1996年11月4日に打ち上げられました。 ロケットは予定通りの高度まで上がりましたが、第3ステージでの衛星とロケットとの 切り離しに失敗し、HETE-1、SAC-B 両衛星とも打ち上げ後、1日以内での太陽 電池からの電力供給ができず、衛星として機能する事はありませんでした。

しかし、その後 HETE チームの賢明な努力で、HETE が目指していたガンマ線バースト観測 の意義が認められ、NASA は HETE-1 でのフライトスペアー品を用いた HETE の再挑戦を認めました。そして、1997年 7月に HETE-2 衛星の予算がつきました。

サンタクルス会議から約 20年後の2000年10月9日、HETE-2 はペガサスロケットで 無事、予定の軌道に投入されました。

HETE-2 の打ち上げの様子を知りたい!

太陽電池パネルを広げた HETE-2 衛星


ペガサスロケットに取り付けるため、HETE-2 衛星が運ばれてきました。 (FedEx って衛星も運んでくれるんだ、へ〜。)


ペガサスロケットに HETE-2 が取り付けられました。


ロケットにカバーがかけられました。


ペガサスロケットが飛行機のお腹部分に取り付けられました。


いよいよ離陸です。


高度約12kmまで飛行機で運び、ロケットを落下。


落下後、約5秒後にロケット点火!


約5分で、予定の高度まで運んでくれます。


HETE-2 ってどんな特徴があるの?

1. ガンマ線バースト発生位置を数十秒で速報!

HETE の一番の特徴は、ガンマ線バーストの発生位置の速報です。 HETEはガンマ線バーストを検出すると、そのバーストに関する 観測結果の要約を赤道上に配置した受信専用の局に向けて送信します。その情報 はマサチューセッツ工科大学で集約されてから、ガンマ線バースト連絡網 (GCN: GRB Coordinates Network) によって全世界に配信されます。GCN加入者はHETEのバースト座標を バースト発生から数十秒以内に受け取ることが可能です!

この速報体制を可能にしているのは、HETE-2 の軌道上に隙間なく置かれている 地上局です。HETE-2 は 137.96 MHz という周波数帯を用いて 300 bps の パケット化されたデータを常に放送しています。普段は衛星や検出器のステータス 情報を流していますが、ガンマ線バーストを検出すると、バーストが起こった 時刻、軌道上のどこで起こったか、トリガーが起こったタイムスケール、 エネルギー範囲、機上での位置決め解析の結果などが放送されます。

HETE-2 からの放送を受信する地上局は、非常に安価なシステムです。必要なものは VHF のレシーバー、アンテナ、そしてコンピュータだけです。











下に示す図が HETE-2 の赤道軌道上にくまなく配置されている地上局(赤点)です。赤丸の範囲 が各地上局の受信可能範囲を示しています。これならば、HETE-2 が軌道上のどこにいても HETE-2 からの放送を受信する事ができますね。


2. 広波長帯でのバースト本体の分光観測

HETE-2 には3つの観測機器が搭載されています。特にガンマ線バースト 本体の放射スペクトルの研究で重要な役割を持っているのが、X線の 検出器 (WXM) とガンマ線の検出器 (FREGATE) です。下に示す各検出器 の有効面積の図から明らかなように、HETE-2 では、2-400 keV という 3桁にもわたる放射スペクトルの様子が途切れる事なく研究する事が できます。
(くわしくは
こちら)


HETE-2 の観測装置について教えて!

HETE-2 に搭載されているのは次の3つの観測装置です。




クリックするとそれぞれの検出器の詳細な解説が見れます


坂本 貴紀 (sakamoto@hp.phys.titech.ac.jp)