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新しい検出器"APD"とNeXT衛星


X線やγ線のスペクトル測定に良く使われる検出器に「シンチレータ」と 呼ばれる放射線検出器があります。X線やγ線を吸収すると、そのエネルギーに 比例した光を放出し、これをとらえることで放射線のエネルギーを測る ことが可能です。シンチレータが生成する光は非常に微弱なため、到底肉眼で 見ることはできません。この微弱な光を捉えるたえの光検出器として「光 電子増倍管(PMT)」と呼ばれる装置が、現在はもっとも良く使われています。 PMT は、量子化された光の粒子(光子)が1個入っただけでも信号を増幅 して、我々の目に見えるパルスに変換してくれます。

しかしながら、光電子増倍管は容積がかさばり、動作させるためには1000V を越えるような高い電圧が必要です。また、磁場の影響を受けやすいほか 入ってくる光を100 % 電荷信号に変換してくれる訳ではありません。この 変換率を量子効率と呼びますが、PMTの場合は約30 % が典型的な変換率となります。 一方で、PMT 以外にもフォトダイオードと呼ばれる光検出器が用いられる こともあります。フォトダイオードは通常 100 V 以下の電圧で動作し、容積も 小さく、量子効率も 80% 以上の高い値を示します。しかしながら、素子の内部に 増幅機能を持たないため、1光子レベルの微弱な信号は、到底読み出すことができ ません。

そこで我々が目を付けたのが「アバランシェ・フォトダイオード (APD)」と呼ばれる "第3の"光検出器です。「アバランシェ・フォトダイオード (APD)」は フォトダイオードの仲間ですが、内部に信号を増幅する機能を持っています。 そのため、通常はノイズに埋もれてしまうような微弱な光信号を、高い量子効率 を保ったま読み出すことが可能です。つまり、PMTとフォトダイオード の良い所 を併せもった、新しい検出器といえます。数年前から APDは素子自体として 存在していましたが、光ファイバーの受光面などの限られた用途でしか利用 されていませんでした。我々は、浜松ホトニクス社と共同で「放射線素子としての」 APD 開発に着手し、世界でも最先端の優れた成果をあげています。さらに、 小型で高性能な特徴を生かして、近い将来に我々の開発している小型衛星や NeXT衛星でAPD 素子を使用することが検討されています。