文部科学省科学研究費補助金 平成19年度発足特定領域(領域番号468)

ガンマ線バーストで読み解く太古の世界

ガンマ線バーストとは?

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ガンマ線バーストとは?

 ガンマ線バーストは、数秒ないし数十秒間という短時間、天空の一点から強烈なガンマ線が突然降り注いでくる現象です。1960年台の米ソ冷戦時代に米国の核実験査察衛星が期せずして発見いたしました。
 平均すると全天で一日に一個の割合で発生するという、それほど珍しい現象ではありませんが、短時間で消えてしまうため、何が出しているのかわからず、その起源は発見以来30年にわたって謎でした。

  長らく謎だったガンマ線バーストに関する理解が急進展したのは、発見から30年たった1997年でした。この年に短時間のガンマ線放射のあとに数日以上にわたって弱いX線や可視光の放射が残っていることがわかったのです。これがガンマ線バーストの残光(英語でafterglow)の発見でした。可視光残光を大望遠鏡で分光観測したところ、ガンマ線バースト源は、数十億光年の遠方にあることが明らかになりました。数十億光年の距離を光が旅するには数十億光年の時間がかかります。すなわち、我々は数十億年前の宇宙で発生したガンマ線バーストを現在観測しているわけです。また、これほどの遠方にありながら強烈なガンマ線が太陽系に到達することから、本来は極めて明るい、宇宙で最も明るい爆発現象であることも明らかになりました。この明るさゆえに、宇宙の果てまでも照らすサーチライトとして活用するのが、本領域の目標です。
 もうひとつの大きな進展は、2003年に起きたガンマ線バースト残光から超新星起源の成分が観測され、超新星との関連が確立したことです。この発見には日米仏の国際協力で製作されたHETE-2衛星が活躍しました。このことからガンマ線バーストは巨大星の死に伴って発生することが明らかになりました。すなわち、さまざまな距離にあるガンマ線バーストを観測することによって、宇宙の歴史における星の生死を観察することができるのです。

人工衛星と地上観測の連携

残光の時間経過

 具体的には、どのように観測を進めるのでしょうか。ガンマ線バーストの位置は、人工衛星の観測によって位置が決定されるとその情報が、中継衛星、インターネットを通じて全世界の研究者に1分ほどで届けられます。そうしたら急いで観測を開始します
 この図に示すように、時間とともに残光はどんどん暗くなっていきます。一時間たつと一分後の100分の1の明るさになってしまいます。1日後には、さらに1/100に減ってしまいます。したがって一刻も早く観測を開始することが必要です。そのため、本領域では、自動化した専用望遠鏡を用いてガンマ線バースト残光の早期観測を行ないます。その中で特に遠方と判断されたものに対して、すばる望遠鏡で分光観測を行ないます。