計画研究C「ガンマ線バーストの起源の理論的研究」
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研究概要
本計画研究では、宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バースト(GRB)を用いて太古の宇宙を読み解くために、GRBの起源の理論的研究を総合的に推進する。
GRBを用いて太古の宇宙の星の生死を読み解くという全く新しいフロンティア
近年になって、GRBは重い星が最後に超新星爆発を起こす時にジェットが飛び出して発生することが分かってきた。GRBが重い星の死なら、宇宙最初の星ができた太古の宇宙にもGRBは存在したはずである。しかもGRBは最も明るいので宇宙の果てでも観測できる。代表者らが発見したGRBの光度とスペクトルに基づく距離指標を使うと、最遠の銀河よりも遠いGRBがあると推定される。
計画研究A、Bによる最新観測を解読するには理論的研究が不可欠
今後の観測で太古のGRBが多数発見されるのはまず間違いない。2005年にSwift衛星が稼動し始めてすぐ、日本のすばる望遠鏡が最遠の銀河に匹敵する128億光年先のGRBを発見した。世界中で太古のGRBを捉える体制が着々と整えられつつある。
理論の各分野のエキスパートが集結し、世界にも類を見ないような強力な研究体制を構築
テーマが多分野にまたがるので、一研究者がすべてをカバーすることは不可能であり、それゆえ未開拓領域である。具体的には、@GRBの親星、母銀河、A超新星爆発、Bジェットの伝播、CGRBと残光の放射、という主要分野における専門家を擁し、有機的な相互作用を深めることで、過去から現在に至るGRBの起源に迫る。
研究目的
本計画研究では、宇宙最大の爆発現象であるGRBを用いて太古の宇宙を読み解くために、GRBの起源の理論的研究を総合的に推進する。GRBの起源は約40年前の発見以来、宇宙物理学最大の謎の一つであった。GRBまでの距離ですら、1997年に残光(GRBの方向に残る、時間とともに冪的に暗くなる光)が発見されるまで不明であった。しかし残光発見以降の急速な進展により、2003年ごろGRBは超新星爆発に付随しておこることが明らかになった。つまり、重い星が死ぬとき(おそらく中心にブラックホールができて)GRBがおこるようなのである。ガンマ線は直接中心から出られないので、残光から示唆されるようにGRBはジェット状をしていて、ジェットが星を突き破ってGRBになると現在では考えられている。このようにGRBは星の死とブラックホールの誕生に関係する重要な現象であることが判明した。
GRBが重い星の死なら、宇宙最初の星ができた太古の宇宙にもGRBは存在したはずである。しかもGRBは最も明るいので宇宙の果てでも観測できる。つまりGRBを用いて太古の宇宙を読み解くという全く新しいフロンティアが開けた。具体的な研究課題は以下の6つである。
- 宇宙最初の星(初代星)はいつ生まれたのか?(GRBの存在が星の存在を示す。)
- 水素とヘリウム以外の重元素はどのように宇宙に広がったか?(炭素以上の重元素は星の中で作られ、超新星爆発や星の質量放出によって宇宙にまかれる。吸収線で測定。)
- 星生成率は時代とともにどう変化したか?(GRBは星の死なのでGRB発生率から測定。)
- 銀河は、いつ、どのように生まれたのか?(宇宙は重い星からの紫外線で再電離されたと考えられているが、再電離の歴史は銀河のでき方に依る。電離度をLya吸収端で測定。)
- どのような星がGRBをおこすのか?(超新星爆発からGRBを起こす親星の性質を測定。)
- GRBを距離指標として宇宙を測れるか?(米徳関係などの距離指標を使うと、距離が分からないGRBの中に、これまで知られている最遠の銀河を超えるものがあると推定される。)
一方、今後の観測で太古のGRBが多数発見されるのはまず間違いない。2005年にGRB専用衛星Swiftが本格稼動し始めてすぐ、Swiftとの連携で日本のすばる望遠鏡が128億光年先のGRBを発見した。これは知られている最遠の銀河に匹敵する。世界でも太古のGRBを捉える体制が着々と整えられつつある。また日本のSuzaku衛星(~keV)や来年打ち上げのGLAST衛星(~GeV)もGRBを観測する。最近では、極端に暗いGRBが発見され普通のGRBよりも数が多い可能性が指摘されている。超新星を付随しないGRBも見つかった。つまり、これまでは氷山の一角を見ていたに過ぎず、今後ようやくGRBの全貌が明らかになってくるのである。
このような中、計画研究A、Bで得られる最新のGRBの観測結果から、太古の宇宙の物理量を導くためには、理論的研究が不可欠である。例えば、GRB発生率から星形成率を求める際にも、昔は重元素量が少ないためGRBを起こす親星の性質が異なり、GRBの発生率や性質が違う可能性がある。その他、GRBの吸収線はどのように宇宙の電離度や重元素量をサンプルするか? 米徳関係などの距離指標は、親星の質量や組成によるのか?といった観測サイドからの問いに答える必要がある。一方、理論的結果を観測の解析や開発の方針決定に活用することも重要である。これまでも我々は観測と共同で米徳関係を発見するなど重要な貢献をしてきた。
テーマが多分野にまたがるので、一研究者がすべてをカバーすることは不可能であり、それゆえ未開拓領域である。本計画研究では理論の各分野のエキスパートが集結し、世界にも類を見ないような強力な研究体制を構築する。具体的には、@GRBの親星、母銀河、A超新星爆発、Bジェットの伝播、CGRBと残光の放射、という主要分野における専門家を擁し、有機的な相互作用を深めることで、過去から現在に至るGRBの起源に迫る。
研究計画・方法
GRBの起源を解明するために、以下の重要分野を各分野の第一人者をリーダーとして総合的に研究する。分野間の有機的な相互作用を深めるために、全体の総括を代表者(中村)が行う。具体的には、以下の項目を柱として1ヶ月に1回程度分担者が京都、または東京で集まり研究成果と今後の方針の議論をする。
- GRBの親星、母銀河(大向)
水素とヘリウムだけでできた宇宙最初の星の構造と進化を調べ、そこから生じるGRBを議論する。また、宇宙に重元素が蓄積していくにつれて、生まれる星の性質がどう変わるかを調べる。また宇宙の電離度の効果や太古の銀河の観測可能性も議論する。
- 超新星爆発(野本)
近傍のGRBに伴う超新星のスペクトル進化からGRBを起こす親星の種族を制限する。2-3次元の非球対称超新星のモンテカルロコードを詳細なスペクトル進化を追えるように改良する。またジェット状爆発での元素合成を計算し重元素欠乏星と比較して親星を制限する。コード開発とランに研究支援者を1名雇用する。
- ジェットの伝播(長滝)
GRBを起こす親星の中および外でのジェットの伝播を特殊相対論的磁気流体コードによるシミュレーションで明らかにする。特にジェットの伝播の重元素量依存性(つまり時代依存性)、光度依存性などを調べる。毎年PCを購入し最終的にクラスター化する。 - GRBと残光の放射(井岡・山崎)
GRBの放射機構を解明する。これは米徳関係などの距離指標の改善につながる。特に輻射輸送と輻射によるプラズマ加速を同時に考慮する。ジェットの伝播の影響も調べ、親星の質量や重元素量にどれくらい依存するかに注目する。
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