計画研究A「爆発的X線・γ線から探るガンマ線バーストの起源と環境」
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研究概要
数十億光年以上の遠方で発生する宇宙最大の爆発、ガンマ線バースト(GRB)を光源として、星や銀河が生まれつつある太古の宇宙を読み解くという本特定領域の目標を達成するために、本計画研究では、GRBの放射エネルギーの大部分を占め、真っ先に検出されるX線・γ線の爆発的放射(prompt emission)を人工衛星を用い観測し、以下の3点を求める。
- ガンマ線バーストの検出と位置座標
- 広帯域のスペクトルと輻射強度、時間変動の計測に基づく距離指標
- 高分散X線スペクトルの観測による赤方偏移と発生源環境の計測
領域期間中に運用される衛星を用いた観測研究を行ないつつ、太古のGRBでは重要になるX線領域の観測に重心をおいて、次世代の広帯域・高分解能GRB検出器を開発する。
研究目的
本計画研究の課題は、GRBの放射エネルギーの大部分を占め、最初に検出されるX線・γ線の爆発的放射(prompt emission)の人工衛星を用いた観測である。数十億光年以上の遠方で発生する宇宙最大の爆発、ガンマ線バースト(GRB)を光源として、星や銀河が生まれつつある太古の宇宙を読み解くという本特定領域の目標を達成するために、X線・γ線の爆発的放射の観測から導くべき情報は以下の3点に集約される。
- ガンマ線バーストの検出と位置座標
X線・γ線爆発的放射を検出し、位置を決定することから一連の研究が始まる。その意味で、本計画研究は領域研究全体の最上流に位置する。ガンマ線バーストのγ線爆発的放射は、数十秒間とはいえ、この波長域で全天を圧倒する強度をもつ。天空の広い領域(全天の1/10以上)を監視し、一旦GRBを検出したら望遠鏡を向けるに足る精度(最低10分角、1分角以下が目標)で位置を決定し、可能な限り短時間(1分以内)で地上に通報しなくてはならない。
- 広帯域のスペクトルと輻射強度、時間変動の計測に基づく距離指標
X線・γ線爆発的放射エネルギーEg とスペクトルのピーク光子エネルギーEpeakとの相関及び、強度変動の激しさと放射エネルギーとの相関が、経験的に知られている。これらの関係を、広い範囲のEpeakに対して検証してその物理的理由を理解できれば、X線・γ線爆発的放射の性質と強度だけから真の光度と距離(即ち赤方偏移)を推定し、宇宙年代に対するGRBの発生率を求めることが可能になる。可視・近赤外残光の分光によって赤方偏移が決められるGRBが全体の1/4に過ぎないことを考えると、X線・γ線爆発的放射のみに基づく距離指標の確立は重要である。十分広い範囲のEpeakへの対応、全放射エネルギーの正確な評価、及び異なる放射機構の判別のため、1 keV以下の軟X線から10 GeVを超える高エネルギーγ線までの広帯域観測が必要である。
- 高分散X線スペクトルの観測による赤方偏移と発生源環境の計測
GRB源を取り囲む物質があれば、X線スペクトルに元素固有の吸収構造や蛍光輝線が検出され、赤方偏移と元素の存在量が推定される。今までに数例の報告があるが、いずれも決定的と言えるほどの統計的有意性が得られていない。しかし、光学近赤外残光と異なり、ほとんど全てのGRBはX線放射を伴うので、この手法による赤方偏移の決定と、GRB源周辺環境の観測の重要性は高い。
以上の項目を目的として、現在運用中(Swift, Suzaku, Chandra)、あるいは本研究期間初期に打ち上げられる衛星(GLAST, MAXI)を用いてX線・γ線爆発的放射を観測する。Swiftなどの位置情報(項目A)に基づいて可視近赤外観測(計画研究A02)が開始され、そこで得られた可視近赤外残光のスペクトルから得た赤方偏移は、爆発的放射の全エネルギーや距離指標(項目B)の較正に用いられる。また、Chandra、Suzaku等で測られたX線スペクトルの情報(項目C)と可視近赤外観測も比較研究される。本領域の期間には確実に衛星観測が可能であり、上記課題の(A)と(B)を実施し、GRB発生機構の理解に基づく距離指標の確立を実現する。ただし、項目(B)に関して、軟X線領域側がカバーされていないので、Epeakのパラメータ範囲は、やや制約される。一方、項目(C)は、例外的に明るいGRBを観測できるような幸運に恵まれなければ、現行の衛星で実現は難しく、将来の高分解能X線分光器の開発が主要課題となる。また、項目(A)、(B)に関しても、軟X線側に帯域を広げるために新装置の開発が必要である。本領域期間中、または領域終了直後に小型衛星を用いた観測が行なえるように、小型軽量のGRB位置決定装置と、特にX線領域に重点をおいた広帯域分光器を開発する。これらの装置は、イタリア、オランダのグループと共同でESAに提案するEDGE衛星への搭載を目指して開発する。
研究計画・方法
上記の目的を達成するため、3グループに分け、それぞれ下表のような体制と役割分担で本計画研究をすすめる。3グループは独立性を保ちながらも、研究代表者のコーディネーションの下に局面に応じて有機的に結合し、それぞれの研究成果を互いにフィードバックさせる形で研究をすすめる。
グループ | 分担者・研究支援者 | 観測実験 | 装置開発 |
---|---|---|---|
東工大 | 河合・片岡 博士研究員1名 大学院生5名 |
Swift GLAST |
透過型アバランシュ フォトダイオード(APD) 2次元アレイ型検出器 |
青学大 + JAXA |
吉田・山岡・冨田 博士研究員1名 大学院生5名 |
HETE-2 Suzaku-WAM MAXI |
広帯域X・γ線分光器 (新型シンチレーター+X線CCD) |
金沢大 | 村上・藤本 博士研究員1名 大学院生2名 |
Suzaku-NFI(EDGE) | 超高分散X線分光装置 |
Suzaku衛星 WAM: 広帯域全天モニター/ NFI: 狭視野観測装置。すなわちXISとHXD
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