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開発風景 その1 計画1年目「概念設計~基本設計まで」(2016年11月〜

ことのはじまり

2015年秋。ASTRO-Hの熱環境試験の深夜当番をしながら、TSUBAME衛星の次は何をしようかなと思案していて思いついたのが「深層学習を応用した姿勢センサ」の開発でした。ちょうどその頃、「深層学習やスパコンを天文学に応用しよう」という研究を始動し、全天画像から雲を識別する実験を行っていました。情報理工学院の篠田先生・井上先生の協力で開発した識別器は驚きの性能で、これを衛星からやれたら面白いだろうな〜という軽い気持ちで提案書を書いたのがすべての始まりでした。

姿勢系の開発は東工大チームとしても科学衛星を実現するためにどうしても必要なものであり、J採択されるかどうかの確信はなかったものの、JAXAの提示した最短のスケジュールに間に合わせるため、急ピッチの開発がはじまりました。

2015年12月21日〜23日 プロトン照射試験@若狭湾高エネルギー研究センター

TSUBAME概念設計からおよそ5年。驚くべきことにIoT機器の発展により手に入るデバイスの種類、開発環境はガラッと変わっていました。まずは、宇宙の放射線環境にも耐えられるデバイスの選定から宇宙機開発が始まります。

若狭で実験をする時は照射室内での白衣着用が義務付けられています。 せっせと作業。状態監視用のハーネスが死ぬほどあってセットアップが大変です。

2016年4月29日 DLASプロジェクト ミッション定義審査(MDR)/システム要求審査(SRR)

搭載デバイスの選定、BBMを用いた動作試験などをある程度完了し、DLASのミッション定義確定し、そこから導かれるシステム要求をまとめあげ審査会を実施しました。

ゴールデン・ウィークの初日に審査員として集まってくれたのは、TSUBAMEの開発で苦楽をともにした懐かしい面々です。彼らの多くは、企業の第一線で研究開発を引っ張っており、学生の時とは一味違う鋭いツッコミで現役学生を苦しめてきます。

DLASプロジェクトの初代プロマネ太田くん。(TSUBAMEのCDH開発を牽引したものの、当時を思い出すと原因不明の頭痛に見舞われるという。) このプロジェクトは、「TSUBAMEの反省」がスタートポイントであり、開発体制、設計方針、マネジメントなど、あらゆる方法で開発の効率化を試し、次世代の学生を教育することが目的になっています。

2016年5月10日・31日 放射線照射試験@コバルト照射室

東京工業大学コバルト照射室でトータルドーズ試験を実施しました。学内にこの施設があることが東工大宇宙開発の大きなアドバンテージになっています。

セットアップの図。左中ほどの円筒形にコバルト線源が出てきます。被検体は右側(当てたくない装置は鉛の後ろに退避)。 無駄にムキムキのむらキングとひょろい吉井くん。

2016年5月28日 STT試験用画像撮影@東京工業大学本館屋上

STT用カメラのテスト撮影。そもそも、どれくらい写るのかもさっぱりわからないため、とりあえず撮ってみようということで屋上へ。(考える前に即実行が「実験屋」のあるべき姿ですw)

針田くん、村キング、吉井くん。 超都会東京の夜空。これで星が写るとは驚きです。

2016年6月18日 重力波対応天体探査衛星「ひばり」キックオフミーティング

DLAS開発に並行して、紫外線による重力波対応天体サーベイ衛星の概念設計を開始しました。

ひばり衛星の概念設計をリードするのは俵くん。 新しい計画を考えるのは故障解析と違って超楽しい。

2016年7月17日〜20日 プロトン照射試験@若狭湾高エネルギー研究センター

設計が固まってきて、またいろいろと照射します。若狭湾エネルギー研究センターは福井県にあります。

照射実験といえば焼き肉なわけですが、ちょっと時間があったので、食前の運動。古賀くん、まっつん、林くん(灯台を探して放浪) 放射線に勝つため、昼飯はあのソースカツ丼の発祥の店「ヨーロッパ軒」のソースカツ丼。この辺は「カツ丼」がみんなソースカツ丼だから注意が必要。

2016年9月6日 第60回宇宙科学技術連合講演会@北海道・函館

産業化のための実験プラットフォームを提供するという革新的衛星技術実証はJAXAにとっても新しい試みです。第60回の宇科連ではこのオーガナイズドセッションがあり、函館へ全員集合!(講演中の写真は無いですが、ちゃんと発表しました。)

北海道の朝(既に肌寒い) 函館からの夜景(みんなで写真撮りまくり)。

2016年9月12日 三菱財団授与式

DLASは基礎研究というよりも産業化を目的としているため、民間研究助成資金から開発費を調達したいと考え、精密測定技術振興財団、および三菱財団からの研究助成を頂いて、フライトモデルの開発までを行いました。ネクタイの締め方も危うい状態で谷津が授与式に参列。

三菱商事ビルディング最上階で授与式(というかパーティー)。気さくに話しかけてくれた人が三菱重工の会長だったり。「(失敗を恐れる)日本のメンタリティではSpaceXの様な宇宙開発はできない」という言葉が印象的でした。 ビルからの眺望。ただ飯食ってただけではなく、この会場でひばりの観測戦略アドアイザとなる甲南大の富永さんと議論できました。

2016年10月12日 回路設計レビューなど

BBM(その実EMの中間相当)の回路設計レビューを行いました。設計は新星菊谷くん。すでにCADを使いこなし、その設計スキルはプロ並み。彼の活躍により、初めてDLASの超短期開発が可能になりました。

細かいので血眼。マッツン、菊谷、新谷、小池。 マイスター菊谷によるハンダ付け実習会。ダメ出しされる河合研の学生たち。

2016年11月12日 第60回衛星設計コンテスト

DLASと並行して概念設計を行ってきた「ひばり」の最終審査会です。TSUBAMEも設計コンテストから宇宙に飛び立ちましたが、ひばりもここからスタートです。

本番前でガチガチの針田くんと余裕の俵くん。 余裕のトークで引っ張る俵くん(右)、緊張気味の針田くん(中)、ボケ担当新谷くん(左)
静かに見守る精神的支柱マッツン。 無駄にモーターまで仕込んである衛星模型。
そして、設計大賞を受賞!! 模型を前に記念撮影。


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